本計画は児童養護施設の移転・新築計画である。
移転前、子どもたちは鉄筋コンクリート造の大きな施設の中で共同生活を行っていたが、子どもたちそれぞれの個性を尊重し、育ちを応援できる環境を求めた運営法人の理念を元に、少し広い「普通の住宅」が4棟と管理棟1棟が集まって生まれる、豊かな居住環境を目指した。

敷地は背景に卯辰山麓を望む市道から約3ｍの高台にある平地。
居住棟は1階にLDKなどの共用部を配し、2階には高窓を持つフリースペースを囲うように子どもたちの個室を6部屋配置している。
各棟は少しづつずらしながら共用部が相向かいになるように建てられ、間にはデッキテラスで繋がったり、広場や植栽が施されるなど、内外ともに子どもたちの成長や個性に応じて、自分にとって心地よい居場所を見つけられるように工夫を施した。
更に子どもたちが自分の住まいに愛着を持って貰えるように、2階部分の外壁の色を4色に分け、金沢市の景観条例を遵守しながら、建物それぞれの個性を表現している。

一方、管理棟は1階に事務系諸室、実習生宿泊室、2階に心理療法室、親子訓練室などを持ち、コンパクトでありながら、機能的な設えとしている。

児童養護施設等の地域への参入、小規模化が求められる中、それまで一緒に生活していた子どもたちの生活を守りながら、どの様に移行していくのか。その一つの解になればと願っている。